「仕上げ師の世界」

バイク・マイスター
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神戸の小さいバイクショップ(SAK)ですが、そこのオーナーの雑誌記事を見つけたのでご紹介します。なんと凄い人でした・・・以下は、雑誌の記事を参考にさせてもらいました。

「仕上げ師の世界」
4ストロークで2ストを抜きさる! 職人気質の名チューナーがかたるエンジンチューニングの極意
角田氏に4ストエンジンのチューニングの話しを伺う前に、これまでスペシャルオートカクダがチューニングしたオートバイが、どれほどの成績を残してきたか、紹介する必要が有るだろう。昨年(’98年)のTIサーキットと鈴鹿サーキットで開催されたクラシック125ccクラスの全戦優勝は勿論のこと、シングルレースの頂点、エキスパートシングルクラスでも数々の優勝など、4ストローク・シングルのレースで、スペシャルオートカクダがチューニングしたオートバイは、圧倒的な成績を収めてきたのだ。そして2ストロークが全盛だった’80年代前半、角田氏がチューニングしたCB250RS(4スト・シングル)がRZ350を抜きさってしまった伝説や、現在でも一見何でもないように見えるのに角田さんのところのオートバイは滅茶苦茶速いという証言は至る所で聞くことが出来る。能ある鷹は爪を隠すではないが、一見何でもないように見える角田氏がチューニングしたオートバイは、確実に速いのである。

角田氏がオートバイに関わったのは、CB72が全盛期だった67年頃からだという。「金銭的にレースをやるような環境じゃなかったんで、友人のつてで木の実レーシングに入り、以来ずっといじる方でやてきた」という。ところが、チューニングを始めて間もない頃から、角田氏がチューニングしたマシンは、当時のRSCワークスマシンとストレートで互角に走っていたという。「基本的には、ピストンとカムくらいがRSCのパーツで、後は全部、今やっているのと同じようにロッカーアーム、バルブ軽量とかするだけだった」と角田氏はいうが、それでもワークスマシーンと同等のスピードを発揮していたのだ。
ではどうして角田氏はそのような芸当が出来たのだろうか? その秘密は角田氏の「今じゃ無くなってしまいましたけど。昔仕上げ師とうい仕事をしていたんですよ」と言う言葉に集約される。仕上げ師とは、「機械加工した産業機械を組立てる過程で不具合の有るところを、手で加工して組上げる仕事。つまり部品の手仕事の加工が本職」ということである。ミクロン単位の精度が出せる現在と異なり、機械の精度が悪かった当時は、職人がその勘と技術力でミクロン単位の調整を行なっていたのだ。
確かに現在でもカールツァイスに代表される光学レンズは、最後の仕上げを職人が行なっているという。角田氏はその世界からやって来た職人だったのである。
では、角田氏はチューニングの過程で何を重視しているのだろうか? その点について角田氏は、「一番重視しているいるのは、ポーティングです。ただね、当時と今の時代とでは考え方が全く変わっています。当時は広げればいいという感覚でしたけど、今はどちらかというと流速重視ですね。それに昔はピストンは山型が主流でしょ。今はどちらかというとフラットなものが多い。圧縮が上がれば、同じ爆破力でもピストンが山型だとシリンダー側に逃げますからね。同じ爆発力であれば、ピストンがフラットになり凹みの方が、コンロッド、クランクにつながる効率がいいわけです」と時代時代によって、考え方や方法論がフレシキブルに変化してきたことを窺わせた。
そして「トラブルが出にくいチューニングが重要だ」ということも強調した。「馬力アップだけではどうしても壊れやすくなるので、フリクションの軽減を考える必要がある。というのだ。「具体的には磨きなり、軽量化なり、後部品全体に角を落として抵抗を減らして、エンジンに無理な不可をかけずに後輪馬力を引き出すこと重要なんです。部品の強度を出すために鏡面仕上げしたり、形(肉抜きの仕方)もちゃんと考えないといけません」と仕上げ師ならではの、技の領域についても語ってくれた。
一方、排気系に関しても、「一流どころはみんなわかってますけど、まだまだ一部には、抜ければいいとと言ういう考えでやっているところがありますからね」と、抜けを良くするだけではパワーアップには繋がらないことも指摘した。「パワーバンドを拡げるために試行錯誤している内に、排気音が少しずつ静かになっていった」というのだ。確かに言われてみれば、最近のワークスマシン(スーパーバイク)は排気音が静かだ。しかも、私の問いに対して角田氏は「CB250RSでテストをやっている時(15~16年前)に、そういうのが出たんですよ」と遥か以前にその事実に気が付いていた、驚くべき告白をしてくれた。
では、排気側も吸入ポート同様、流速を上げる必要が有るのだろうか?その点に関し、角田氏は、「特別それはないです。やっぱり重要なのは、完全燃焼しやすい吸排気にしてやることでしょう。ウチはサイレンサーやメガホン部分も全部板から巻いて。エキパイは全部手曲げですけど、その時代時代で微妙に構造が変わってますから」と吸排気のバランスが重要であることを示唆してくれた。
またこれまでホンダ車ばかりを手がけてきた経緯について角田氏は。「自分が最初に乗ったオートバイがホンダだったということもありますけど、ホンダのエンジンの設計は、安全マージンが大きいっていうのが最大の魅力ですかね。チューニングして行く上で、その分パワーが上げられるし、上げたときの強度、耐久性があるので安心なんです。基本設計がいいんでしょうね」と語ってくれた。
最後にチューニングに関して、「外観だけじゃなしに、細かいところまできっちり手を加えて、作業することが大切です。コストダウンしようとしたら、どうしても手を抜くことになりますから、その分いいものはできなくなる。やっぱり手間をかけないと良いものはできないということです」
角田氏のチューニングに対する極意が集約された一言だと言えるだろう。


SAK HONDA NRS-3

伝説の名チューナーがチューニングしたNRS-3は予想をはるかに超える完成度を持っていた。
TIサーキットで開催されるモトルネッサンスで、何と7戦6勝という圧倒的な勝率を誇っているマシン、それがスペシャルオート・カクダの角田浩一郎氏がチューニングしたSAK/HONDA/NRS-3である.
■関東では馴染みがないかもしれないが、NRS-3を製作した角田氏は、知る人ぞ知るチューニングの名手である。その昔、角田氏がチューニングしたCB250RS(4サイクル単気筒)がRZ350(2サイクル2気筒)をブチ抜いた話は、今でも当時の中山サーキットに通っていたライダー達の間では語り草だという。それくらい角田氏のチューニングしたオートバイは速かったのだ。その角田氏が製作したNRS-3は、エンジンがホンダGB500をベースにポア×ストロークを102mmX80mに拡大し、排気量は654∝までアップしている。しかしながら、コスワースのピストン、メガサイクルのカムシャフト、R&Dのバルブスプリング以外は、すべてノーマルの部品を加工して使っている。
残念ながら今回は見ることは出来なかったが、角田氏が精魂傾けてチューニングしたエンジンの内部は、溜息が出るほど美しいという。お金を掛ける代わりに手間を掛けたのがNRS-3のエンジンなのである。一方、車体は,91年型RS250のフレームを、過去のデータに基づき、エンジン位置がベストになるように改造している。このマシンが完成したのは93年の夏ということだが、NRS-3というネーミングからも分かるように、角田氏が製作した3作目のシングルレーサーとのこと。このことからも角田氏がかなり以前からシングルレーサー製作に関わってきたことを窺い知ることが出来る。
キックペダルを使い角田氏がエンジンを始動させてくれたNRS-3を受け取り、ゆっくりとコースインする。39mmのFCRキャブレターを2連装しているにもかかわらず、神経の行き届いたチューニングが施された空冷エンジンは、1200回転で安定したアイドリングを刻んでいる。低中速トルクが図太いNRS-3は、2000回転で半クラッチを当てても苦もなくスタートを切ることが出来るばかりでなく、その後スロットルをワイドオープンにしても、もたつきや引っかかりを一切起こさず上限の9000回転までエンジン回転を上昇させる。 このマシンのパワーバンドは5000~9000回転といったところだが、中でも6000~7000回転付近のトルクの出方は強列ぞ、このエンジンが中速トルクでタイムを縮めるタイプであることが理解できた。 マシンに慣れるためにゆっくりとペースを上げる。RS250とサイズがまったく同じNRS-3のライディングポジションはさすがにコンパクトだ。シングルレーサーにありがちな、必要以上にタンク幅を絞り込んだ頼り無さはないが、半面、ヘッドパイプからタンク後端までの距離が非常に短い、前後長の詰まったコンパクトな印象を受ける。
ノーマルのRS250だと直立付近でマシンを左右に振ると、ヒラヒラするほど軽く感じられるのだが、4サイクルビッグシングルを搭載しているNRS-3の場合、軽快な中にも質量が感じられる落ち着いたハンドリングとなっている。勿論それは切り返しが重いということではなく、質量のある4サイクルエンジンが絶妙な位置に搭載された結果見事にマスが集中し、落ち着いたハンドリングが得られたという蕃昧である。 マシンとの一体化を試みながら、周回を重ねる。ノーマルの5速ギヤを用いたNRS-3のミッションはギヤ比がワイドで、トルクフルなエンジンと相まって通常のシングル以上に低速から力強く加速Lていくように感じられる。 大きく間合いを取りながらシフトアップを繰り返すと、バックストレートでは5速9200回転まで回転が伸び、デジタルの油温計は90.2度という数字を表示した。ちなみに油温がもっとも上がるのはメインストレートの93.4度で、スロットルのオンオフが繰り返されるWヘアピンや最終コーナーを抜けてきた影響を受けたものと思われる。最高回転を確認したところで、ブレーキングに入る。プレンポのレーシングキャリバーがダブルで装着されているFブレーキは、効力&コントロール性とも申し分なく、また減速時の車体の安定性も抜群なので、安心してフルブレーキングすることが可能だ。 ただし、ギヤ比の離れたミッションはシフトダウン時にホッピングを誘発しやすいので注意が必要だ。私はブレーキで十分減速してからシフトダウンするように心掛けていたが、このマシンでレースしている斉藤光雄選手は、普通のポイントでシフトダウンしようと思うと、かなり大きくスロットルを煽ってやらなけいとホッピングが起きてしまうと語っていた。エンジンの負担を軽減し、尚かつ減速時のホッピングを解決する為にはクロスミッションが必要不可欠だろう。
しかしながら角田氏の話によると、流用できるミッションが少なく、理想的なギヤ比を選べないという。クロスミッションさえ手に入れられれば確実にタイムアップできるだけに非常に残念だ。 角田氏が精魂込めて製作したNRS-3は、乗りこなすには少しばかり時間が必要だが、マシン全体のバランスが取れた素晴らしいレーサーと言える。唯一弱点があるとすればそれはミッションということになるわけだ。
現在、シングルレーサーの中で優勝争いに絡めるホンダ車は、このNRS-3をおいて他にはない。ホンダフアンならずとも、今後のNRS-3がどの様に進化するのか、興味が尽きない。
以上が雑誌の記事ですが、その最後の最後に出てくる唯一弱点であるクロスミッションも現在はGB400・500用を特注で製作しているとの事で調べたら、SAKホームページのパーツコーナーに掲載していました。本当に100%の職人の様ですね・・・
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